いつも使っている白髪染めを、また買おうとした時のこと。同じはずの商品なのに、箱の写真も、表に書かれた文字も、なんだか前と違う。「これ、前のと同じものでいいんだよね?」と、手にしたまま少し迷う。そんな経験はないでしょうか。
慣れた一本だからこそ、見た目が変わると落ち着かないものです。気になることは、たぶん二つ。中身まで変わってしまったのか、それとも見た目だけなのか。そして、毎回こうして変わっていくのは、どうしてなのか。この記事では、その二つに順番に答えていきます。
あれ、前と箱が違う ── でも同じ商品っぽい
白髪染めを買い慣れてくると、だいたい同じ商品を選ぶようになります。色も、染まり具合も、使い心地も分かっているから、選ぶときに迷う時間が短くてすむ。だからこそ、その一本のパッケージが変わっていると、ふと手が止まります。
変わるのは、たいてい目に入りやすいところです。表の写真のモデルさんが入れ替わっていたり、大きく書かれたうたい文句が新しくなっていたり、全体の色づかいや雰囲気が今っぽくなっていたり。「ツヤ」「うるおい」といった、染まり以外の良さを伝える言葉が増えていることもあります。
一方で、変わらないところもあります。パッケージのどこがよく変わって、どこは変わらないのか。まず、その二つを分けて見てみます。

並べてみると、よく変わるのは上の段です。写真やうたい文句、デザインといった、パッケージの目立つ部分。私たちが「あれ、変わった」と最初に気づくのも、たいていここです。下の段は地味で、つい見落としやすいところですが、その商品が実際どう染まるかを決めているのは、こちらの色番号や成分の表示のほうです。
中身も変わったの? 見た目だけなの?
では、パッケージが新しくなったとき、染め上がりの色は変わってしまうのでしょうか。確かめる第一歩は、色番号と色の名前が前と同じかを見ることです。

箱の中や裏には、色番号と、その色のサンプルが並んだ表が載っています。リニューアルの前と後で、この色番号と色見本がそのまま引き継がれているなら、染め上がりの色は基本的に同じと考えてよいです。同じ商品の同じ色を、メーカーがわざわざ別の色味に作り変えることは、そう多くありません。
ひとつだけ、軽く添えておきます。ここで「同じ」と言っているのは染め上がりの色のことで、使い心地や成分のほうは、より良くしようと手が入ることがあります。色が同じでも初めて手に取るものとして、使う前のパッチテストと説明書の確認は、毎回続けてください。
つまり、中身の色は基本的に変わらないのに、パッケージのほうは変わり続けている。それはなぜなのか。次は、その理由を見ていきます。
パッケージが変わり続ける理由
パッケージが変わると、選ぶときの手がかりも変わります。ここからは、なぜそのパッケージが変わり続けるのかを、背景も含めて整理してみます。
染める力での差がつきにくくなった背景
白髪染めは、長いあいだ研究が重ねられてきた商品です。染める力そのものは、いまではどれも高い水準まで来ています。「この白髪染めだけが、ずば抜けてよく染まる」というような、染まりそのものでの大きな差は、つけにくくなってきました。
染まりで差がつかなくなると、力の入れどころが移っていきます。染めたあとのツヤや、うるおい、香り、塗りやすさ、肌へのやさしさ。そして、それを伝えるパッケージの見せ方へ。中身で抜きん出るのが難しくなったぶん、見せ方そのものが、選ばれるための工夫になってきた、と考えられます。
もうひとつ、白髪染めには特有の事情があります。白髪染めは、中身そのものが大きく変わることの少ない商品です。中身が変わらないのなら、本来はパッケージも前のまま置いておけばよいはずです。それでもリニューアルやリフレッシュのたびにパッケージを変えるのは、中身で動かせる幅が小さいぶん、見せ方のほうに手を入れているから。つまり、中身が変わらないからこそ、パッケージのほうを変える、という向きが生まれます。これが、パッケージが変わり続ける土台になっています。

パッケージの変わり方のパターン
見せ方が工夫の場所になると、その見せ方はいろいろな方向に動きます。私たちは、いくつものブランドのパッケージを長く見比べてきましたが、その変わり方に、決まった一方向というものはありません。代表的なパターンを三つ挙げてみます。
ひとつめ。前は色見本の毛束を大きく出していた商品が、新しくなって、髪を染めた女性の写真を前面に出すようになる。毛束から人物へ、という動きです。

ふたつめは、その逆向きです。前は人物の写真を大きく出していた商品が、新しくなると、その人物が消えて、染めた髪の色そのものや、泡のきめ、オイルのつやといった中身の質感を大きく見せるようになる。人物から質感へ、という動きです。

みっつめは、人物そのものの入れ替わりです。前は明るい髪の海外風のモデルを使っていた商品が、新しくなると、日本人に近い顔立ちや髪色のモデルに変わっている。同じ商品でも、こうした変わり方が起きることがあります。

毛束から人物へ、人物から質感へ、そして人物の入れ替わり。三つを並べると、行き先がばらばらで、何の方針もないように見えるかもしれません。
ばらばらな変化に共通する理由
ところが、長く見比べていると、ばらばらに見えても、変わり方には共通する理由があります。それは「いま、その商品で何を一番に伝えたいか」という一点です。
新しい剤型を出して、その泡のきめ細かさやオイルのつやを伝えたいとき。それを一番よく伝えるのは、人物の笑顔よりも、剤や髪色そのものの写真です。だから人物を抜いて、質感を前に出す。逆に、使ったあとの自分を思い描いてほしいとき。色見本の毛束より、その色に染めた人の写真のほうが「自分もこうなれそう」と感じてもらいやすい。だから人物を前に出す。海外風から日本人に近いモデルへ変えるのも、見た人が自分ごととして受け取りやすいように、という同じ向きの工夫です。
毛束と人物のあいだを行き来するのは、迷っているからでも、ふらついているからでもありません。伝えたいものが変われば、それを一番よく伝える見せ方も変わる。それだけのことです。方向はばらばらでも、「いま何を一番伝えたいか」という理由は、ずっと変わりません。
見せ方を読めれば選ぶときの目印になる
同じ商品なのにパッケージが変わるのはなぜか。白髪染めは染まりそのもので差がつきにくく、しかも中身が大きく変わらない商品です。中身で動かせる幅が小さいぶん、各ブランドは「いま、その商品で何を一番に伝えたいか」を、見せ方のほうに込めています。だからパッケージは変わり続けます。
変わっていくパッケージは、戸惑いの種ではなく、選ぶときの目印になります。パッケージの見せ方を見れば、その商品が何を一番に推したいのかが分かるからです。
なんとなく気分を変えたいときは、染めた人のモデルが大きく写っている商品を手に取ってみる。いま使っているものから質感を変えたいときは、オイルのつやを前面に出した商品。剤型そのものを変えてみたいときは、泡を前面に出した商品。人物が写っていないパッケージは、質感で選びたいときの目印になります。市販のカラー剤を、気分や目的に合わせて選ぶときの参考になればうれしいです。