白髪染めを選ぼうとすると、たくさんの白髪染めが並んでいますよね。
何が違うの? どうしてこんなにたくさんあるの? 新しく出たもののほうがいいの?
選ぶたびに、そう思ったことはありませんか。
明治から続く3つの世代
白髪染めは、はじめから今のようにたくさんの種類があったわけではありません。市販の白髪染め全体を見渡すと、白髪染めに望まれることは、時代ごとに移り変わってきました。
日本セルフカラー協会では、その移り変わりを時代ごとに分けて、「世代」と呼んでいます。
第1世代「白髪はしっかり暗く」

白髪はしっかり隠したい、という気持ちにまっすぐ応える白髪染めです。白髪を暗く染めて、目立たなくします。明治のころからある、いちばん古い世代です。
明治38年(1905年)ごろの白髪染めは、白い毛や赤い毛を、黒く自然な髪に染めるためのものでした。明治40年(1907年)ごろには、2時間おいて染める染毛剤がありました。
大正5年(1916年)には、染め上がりまでの時間が20〜30分に短くなっています。この頃の白髪染めに望まれていたのは、黒く染まることと、早く染め上がることでした。
昭和32年(1957年)に出た粉の白髪染めは、はじめは黒1色だけでした。のちに、自然な黒褐色や栗色が加わっています。
白髪をしっかり暗く染める白髪染めは、今も定番のひとつです。
第2世代「白髪はしっかり、でも明るく」

白髪が染まる範囲で、できるだけ明るくした、明るめの白髪染めです。白髪はきちんと隠しながら、真っ黒にはしません。1990年代後半から出てきた世代です。

1990年代は、黒い髪を明るくして茶色にする「茶髪」がはやった時代です。1993年に始まったJリーグの選手の影響などで、黒髪を明るくする流行が広がりました。
もともと「茶髪」には不良っぽいイメージがありましたが、1994〜95年ごろには、ふつうの言葉になっていきます。1995〜96年ごろには、歌手の安室奈美恵さんをまねて茶色の長い髪にした「アムラー」が、流行語になりました。
1994〜98年ごろには、若い女性のほとんどが髪を染めるようになっていました。
美容院でも、バブルがはじけたあとの1990年代に、ヘアカラーが大きく伸びていきます。美容師から髪を染めることがすすめられ、染める人が広がりました。1999年には「カリスマ美容師」という言葉が広まり、美容師そのものが世の中の話題になっています。
同じ1990年代後半には、白髪を黒くすることが目的だった白髪染めに、黒髪を地毛より明るくして白髪を目立たなくする色が出てきて、使う人が増えていきます。白髪を黒くするだけだった白髪染めに、明るくしたいという望みが加わりました。
美容師が主人公のドラマ『ビューティフルライフ』が人気だったのも、この頃でしたね。
第3世代「黒髪を明るく・白髪はぼかす」

黒髪を明るくして、白髪との色の差を小さくする白髪染めです。白髪をしっかり染めて隠す、という考え方から変わりました。
白髪はしっかり染まらなくても、まわりの髪となじめばいい、という2015〜16年ごろからの世代です。
第2世代とのちがいは、白髪をどこまで染めるかです。第2世代は、白髪をきちんと染めたうえで明るくします。第3世代は、白髪が染まりきらなくても、黒髪を明るくしてなじませます。

2000年代のはじめには、世の中の髪色がいちばん明るくなります。人気の女性歌手をきっかけに、「ミルクティーカラー」のような明るい髪色が広まりました。
そのあと2003〜05年ごろには、明るすぎない、落ち着いたつやのあるブラウンが好まれるようになります。さらに2012〜13年には、地毛に近い暗めの色に染める「黒髪ブーム」が起きました。
黒髪ブームの頃、10〜20代では髪を染める回数が減りました。一方で、30代より上の人たちは、この頃もほとんど変わらず髪を染めていました。
2000年代には、美容院でパーマよりもヘアカラーをしたいという人が増えていきました。そして2015〜17年ごろ、美容院で「外国人風カラー」が広がります。日本人の髪に出やすい赤みや茶色みをおさえて、外国の人のような「透明感」のある明るさを出す髪色です。
同じ頃、2015〜16年ごろから、市販の白髪染めにも、黒髪を明るくして白髪をなじませる第3世代が出てきました。
その後も、美容院では明るい髪色がさらに広がっていきます。
同じ頃、2018年には「グレイヘア」が流行語の候補になり、白髪を隠すのではなく生かしていく向きが、ひとつの考え方としてはっきりしてきました。
『インスタ映え』という言葉がはやって、髪色もスマホで見せる時代になりましたね。
第3世代のあとの枝分かれ

2020年前後から、市販の白髪染めは1本の流れではつながらなくなります。第3世代のあとは、2つの方向に分かれて、並んで進んでいます。

2020年ごろからは、髪の内側だけに明るい色を入れる「インナーカラー」が広がりました。髪をおろすと隠れて、結んだり耳にかけたりすると見える髪色です。
同じ2020年ごろには「第4次韓流ブーム」が起き、その後は、推し活をきっかけに、好きな人やキャラクターと同じ髪色を楽しむ「派手髪」も広がっています。
美容院では、若い人のブリーチ(髪の色を抜いて明るくすること)が、めずらしくなくなりました。2022年に美容室でカラーをした15〜19歳のうち、4割を超える人がブリーチをしています。
大人の女性には、2021年ごろから、美容院で「白髪ぼかし」が広がり始めました。白髪を暗く隠すのではなく、全体を明るめに染めたり、細い筋のように明るい色を入れたりして、白髪をなじませる染め方です。
※美容院や理容室で使う薬には、1990年代後半から『白髪ぼかし』と呼ばれるものがあります。2021年ごろから広がった『白髪ぼかし』とは、言葉の意味が異なります。
2020年は、新型コロナウイルスの流行で、家で髪を染める人が増えました。
第2世代の派生

第2世代の派生は、第2世代の役目をそのまま持っています。白髪だけが浮いて見える染まり方にはせず、明るくてもしっかり隠す、という役目です。そこに、新しいものが加わったグループです。
第3世代のバリエーションが、流行の髪色と一緒に動いていくのに対して、このグループは、白髪がしっかり染まる第2世代の流れの中で、トレンドを取り入れながら進んできました。取り入れてきたのは、艶や質感、成分、使い方といった、白髪染めそのものの中身です。市販の白髪染めならではのトレンドと言えます。
仕上がりの艶・質感は、白髪を隠すだけでなく、染め上がりの髪の艶や手ざわりまで大事にした白髪染めです。独自の成分・仕組みは、独自成分を使ったり、これまでにない形にしたりした白髪染めです。使い方・人に合わせた白髪染めは、染める間隔や染めたいところなど、使い方や使う人に合わせて考えられた白髪染めです。
白髪をしっかり染めるという範囲の中で、流行を取り入れた市販の白髪染めならではの発展ですね。
第3世代のバリエーション

おしゃれ染めにもっと近い考え方で、流行の髪色を、白髪染めの色の種類に取り入れたグループです。インナーカラーや派手髪のように、髪色そのものを楽しむ流れと同じ向きにあります。
色をプラスした白髪染めは、白髪をなじませながら、流行の色味も楽しめるようにした白髪染めです。白髪染めブランドのおしゃれ染めは、白髪染めと同じブランドから出ている、黒髪用のおしゃれ染めです。黒髪を明るくしたり色を変えたりするためのもので、白髪を染めるためのものではありません。
白髪染めにも、『〇〇アッシュ』や『ピンク〇〇』のような、流行を意識した名前を見かけることが増えましたね。
日本セルフカラー協会が分けた白髪染めの世代

市販の白髪染めを、3つの世代と枝分かれした2つのグループに分けています。
第1世代「白髪はしっかり暗く」(明治〜):白髪はしっかり隠したい、という気持ちにまっすぐ応える白髪染め
第2世代「白髪はしっかり、でも明るく」(1990年代後半〜):白髪が染まる範囲で、できるだけ明るくした、明るめの白髪染め
第3世代「黒髪を明るく・白髪はぼかす」(2015〜16年ごろ〜):黒髪を明るくして、白髪との色の差を小さくする白髪染め
第3世代のあとの枝分かれ(2020年前後〜)
・第2世代の派生:明るくてもしっかり隠す
・第3世代のバリエーション:流行の髪色を、白髪染めの色の種類に取り入れたグループ
世の中と美容院で髪色に求められることが移るたびに、市販の白髪染めも移ってきました。その移り変わりを、市販の白髪染め全体を見渡して、時代ごとに分けたのがこの世代です。世代で区切れるのは、時代を振り返ったときです。第3世代のあとの2つのグループは、いまもそれぞれの中で進んでいる途中です。
新しい世代が出ても、前の世代の白髪染めがなくなったわけではありません。
第1世代から第3世代、そして第3世代のあとに分かれた2つのグループが、いまも同じ時代に並んでいます。

並んでいる白髪染めのどれにも、生まれた時代があります。白髪染めに求められることは時代とともに変わってきて、これからも世の中の変化とともに、新しい白髪染めが生まれてきます。
どの世代の白髪染めがいいかは、流行に合っているかどうかだけでは決まりません。
白髪をしっかり隠したい人も、明るくなじませたい人も、色を楽しみたい人も、自分に合った白髪染めを選べます。
一人ひとりが素敵だと思う白髪染めの美しさを楽しむ時代が、もう始まっています。
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