セルフカラーの基礎知識

白髪の量で変わるカラー剤の選び方

朝、髪をかき分けたときに、根元で光る1本を見つける。抜こうか、そのままにしようか、ほんの少し迷う。そんな朝が、いつのまにか増えてきた——という方は多いと思います。

不思議なもので、髪が全部白くなっていたら、たぶんここまで気にならない。少しだからこそ、その1本が黒い髪の中でやけに目立って見える。白髪が気になるかどうかは、本当は「白髪が何本あるか」よりも、「黒い髪の中で、どれくらい浮いて見えているか」で決まっているのかもしれません。

そして、この「浮いて見える度合い」は、白髪が増えていくにつれて少しずつ変わっていきます。白髪の量が変われば、染めたほうがいいのか・何で染めるのか・明るくするのか暗くするのか、その答えも一緒に動きます。ドラッグストアの棚の前で迷う前に、まず「今の自分の白髪が、黒い髪の中でどう見えているか」をつかんでおくと、選ぶものは自然としぼれてきます。

白髪の「見え方」が変われば、ちょうどいい一本も変わる

「ちらほら白髪」は、白髪染めを急がなくてもいい

黒い髪の中に、白髪がちらほら。見つけると気になるけれど、髪全体で見れば黒い髪が大半を占めている。この頃によくあるのが、「気になるから」とすぐに白髪染めへ手を伸ばしたくなることです。もちろん染めてもいいのですが、この時期は急いで染める以外の道も残されています。

気持ちはとてもよくわかります。ただ、白髪がちらほらのうちに白髪染めを使うと、思っていたのとは逆のことが、少し時間を置いてから起きることもあります。そこを知ったうえで、急いで染めるか・別の道を選ぶかを決められると、あとで「こんなはずでは」となりにくくなります。

あとで黒髪が浮く理由

ここでひとつ、言葉を整理させてください。「白髪染め」と呼ばれる、混ぜて使うクリームや乳液のタイプ(酸化染毛剤といいます)は、白髪をしっかり染めるために、いったん髪の中の色のもと(メラニン色素)を抜いてから、そこへ新しい色を入れていく仕組みになっています。このとき抜かれるのは、白髪だけではありません。まわりにたくさんある黒髪の色のもとも、いっしょに抜けていきます。

染めた当日は、入れた色が黒髪をしっかり覆っているので、暗く落ち着いて見えます。問題はそのあとです。色は時間をかけて少しずつ抜けていきますが、抜けるのは「あとから入れた色」だけ。最初に抜いてしまった黒髪の色のもとは、戻ってきません。

協会が実際に染めて、時間を追って見ていくと、こんな変化がはっきり出てきます。染めた直後は落ち着いた暗さなのに、2か月ほど経って色が抜けてくると、染める前よりも黒髪が明るく、赤茶けて見えてくる。ちらほらの白髪を隠したかっただけなのに、いちばん多いはずの黒髪のほうが、以前より浮いて見えるようになってしまうのです。

根元は暗く、毛先にかけて茶色がかって見える後頭部の髪の例

やっかいなのは、これが時間差で起きること。染めた当日に何か起きるなら気づけますが、2か月後にじわじわ進む変化は、本人ほど気づきにくいものです。「最近、なんだか髪の色が落ち着かないな」と感じる頃には、原因が最初の1回にあったとは思い至りにくい。だからこそ、ちらほらのうちは急がない、という選択に意味があります。

この時期の手は、二つある

では、急がないあいだ、気になる白髪とどう付き合えばいいか。白髪がちらほらの今は、しっかり染め上げることよりも、「黒い髪の中で浮いて見えない」ようにする、という発想が向いています。方向は大きく二つあります。

ひとつは、髪全体を少し明るくして、白髪との明るさの差を縮める方向です。白髪が浮いて見えるのは、黒い髪と白い髪の明るさの差が大きいから。黒髪のほうを少し明るくしておくと、白髪が出てきても差が小さく、目立ちにくくなります。ここで言う「明るさ」は、黒に近い暗さから栗色のような明るさまでの、色の明るさ・暗さの度合いのことだと思ってください。

ただし注意したいのは、黒髪を明るくする「おしゃれ染め(ファッションカラー)」で明るくしても、白髪そのものは薄っすらとしか染まらないこと。白髪はうっすら残ったまま、黒髪だけが明るくなる、という結果になりがちです。「明るくして差を縮める」を狙うなら、白髪にも色が入る白髪染めの中で明るめのものを選ぶ、という前提になります。

もうひとつは、気になる白髪だけを、その場でそっとなじませる方向です。次の見出しで紹介する「戻せる軽い手段」が、ちょうどこの役割を担ってくれます。

「戻せる軽い手段」でなじませる

この時期に向いているのが、髪の表面に色をのせて白髪を目立たなくする「戻せる軽い手段」です。黒髪の色のもとを抜かずに表面へ色をのせるだけなので、向いている理由は、ちょうど白髪染めの裏返しになっています。

  • 気になる1本だけにも塗れる。 全体を染めるものではないので、目で見て気になるところだけ、ピンポイントで色をのせられます。素手で扱えるくらい手軽なものもあります。
  • 黒髪の色のもとを抜かないので、黒髪が明るくならない。 表面に色をのせるだけなので、色が落ちても「元の髪色に戻るだけ」。あとから黒髪が明るく・赤茶けて浮いてくる心配がありません。
  • 繰り返しても傷みにくい。 髪の中を開いて染める仕組みではないため、気になったときに何度でも重ねられます。

この「戻せる軽い手段」には、いくつかの形があります。シャンプーや入浴のついでに少しずつ色を重ねていくカラートリートメント、髪の表面を一回でしっかり色づけるヘアマニキュアなどです。どれも髪の内部を変えずに表面で付き合う点は共通で、塗りやすさや色もちの感じ方で選びどころが分かれます。いずれも、1回でぴたっと黒くなるものではありません。

けれど、白髪がまだちらほらのこの時期に必要なのは、完璧に染め上げることではなく、浮いて見える1本をそっとなじませて、毎日を機嫌よく過ごすこと。そう考えると、戻せる軽い手段でゆるく付き合うのは、十分に理にかなった選び方です。

外出前のその場しのぎでよければ、髪の表面に色をのせる白髪用のマスカラやファンデーションのような一時染毛料もあります。シャンプーで落ちるので、「今日のこの場面だけ隠したい」というときの、もう一段気軽な味方です。

ちらほらのうちに白髪染めで急いで隠すと、しばらくして黒髪のほうが明るく浮いてくることがあります。この時期は、戻せる軽い手段でゆるく付き合うので大丈夫ですよ。

「目立つ白髪」になってきたら、白髪染めも選択肢に

白髪が黒い髪の中ではっきり目立つようになり、表面に色をのせるだけでは追いつかないな、と感じる場面が増えてくる。鏡を見て白髪が目につき、染めるかどうか本気で迷い始める頃。ここが、白髪染めへ切り替えていく、ひとつのタイミングです。

おしゃれ染めと白髪染め、どちらも選べる

店頭には「おしゃれ染め(ファッションカラー)」と「白髪染め」が並んでいます。見た目のパッケージは似ていますが、向いている方向が違います。

戻せるカラー剤・白髪染め・おしゃれ染めの違いを、染まり方と戻せるかどうかで比べた表

おしゃれ染めは、黒髪を明るくしてニュアンスを楽しむためのカラー剤です。先ほども触れたとおり、白髪にも色は入りますが薄っすらとしか染まらず、白い筋がうっすら残りがち。一方、白髪染めは、染まりにくい白髪へしっかり色をのせることを優先して作られています。白髪を隠したいのに、おしゃれ染めを選んで「白いところが残ってしまう」のは、選んだカラー剤の向きが合っていないだけ。白髪が目立ってきたら、白髪染めの出番です。

剤型は「どこを染めたいか」で選ぶ

白髪染めには、クリーム・乳液・泡・ワンプッシュなど、いくつかの「剤型」があります。剤型というのは、薬剤の形・テクスチャーのこと。とろりとしたクリーム、流れやすい乳液、ふんわりした泡——その違いだと思ってください。どれが優れているという話ではなく、塗りたい場所に合うものを選ぶ、というだけのことです。

手のひらの毛束に、とろりとしたクリーム状の薬剤をのせた様子
  • 顔まわりや分け目に集中しているなら、狙った場所に留まりやすいタイプ。 クリームのようにこってりしたものは、気になるところへ塗り込みやすく、垂れて広がりにくい。
  • 全体に散らばっているなら、手早く広げやすいタイプ。 泡タイプは全体へ行き渡らせやすい一方、毎回どうしても全体に回りがちで、髪が長いと毛先まで何度も色が重なり、ムラや傷みにつながりやすい面もあります。

剤型ごとの細かな使い分けや、それぞれの向き不向きは、それだけで一つのテーマになります。ここでは「どこを染めたいかで形を選ぶ」とつかんでおけば十分です。

毛先を傷ませない「根元だけ」という道

白髪が目立ってくると、つい毎回、頭全体を染めたくなります。けれど、すでに染まっている毛先にまで毎回薬を重ねると、その負担が積み重なって、毛先からだんだん傷んでいきます。

分け目に沿って、伸びてきた根元の白髪が見える頭頂部の例

そこで覚えておきたいのが、伸びてきた根元の白髪だけを染める「リタッチ」という考え方です。毛先には触れず、新しく伸びた部分だけに色を入れるので、毛先への負担をぐっと減らせます。毎回の全体染め一択ではなく、根元だけを染める道もある——いまはそう覚えておけば十分です。

「白髪が多い」からこそ、明るく活かすという選択

白髪がさらに増えて、頭のあちこちで目立つようになってくると、もう一つ、付き合い方の選択肢が見えてきます。それが、ちらほらの頃にも少し触れた「明るさでなじませる」という考え方です。白髪が多くなったこの段階では、これがいっそう効いてきます。

暗く染めるほど目立つ根元の差

白髪が多い人が、しっかり隠したい一心で暗い色ばかりで染めると、染めた直後はきれいに整います。けれど根元が伸びてくると、暗く染めた毛と、新しく出てきた白い根元との明るさの差が大きく、その境目がくっきり目立ってしまいます。「染めたばかりなのに、すぐ気になる」という短いサイクルに入りやすいのです。

暗く染める場合と明るく染める場合で、伸びた根元の境目の目立ち方を比べた図

ここで、暗くするのとは逆の方向に、ひとつの道があります。全体を少し明るめに染めて、黒髪と白髪の明るさの差を近づけておくと、根元が伸びてきても境目がなじんで、白い筋が目立ちにくくなる、という付き合い方です。浮いて見える原因だった明るさの差そのものを、やわらげてしまう発想です。白髪が多いほど、この「明るくしてなじませる」は効きやすくなります。

もうひとつ、迷ったときの手がかりがあります。明るすぎたかなと感じたら、暗く染め直すのは比較的かんたんですが、暗くしすぎてしまうと、自分で明るく戻すのはとても難しくなります。だから、どちらにしようか迷う場面では、少し明るめのほうから試すと、あとで調整しやすくなります。

明るさとカバー力のかね合い

ただし、ここには知っておきたい、明るさとカバー力のかね合いがあります。協会で実際に染めて見ていくと、明るく染まる白髪染めほど、白髪を覆い隠す力は相対的に弱くなる、という傾向がはっきり出ます。明るめに振ると、白髪がうっすら光って見えることもあるわけです。

しかも、白髪が多い箇所ほど、選んだ明るさがそのまま見た目に出やすくなります。黒髪が少なくなったぶん、白髪に入った色合いが全体の印象を決めるからです。明るめにすればその明るさがそのまま、白髪のなじみと光り方に表れる、ということです。

これは、どちらが良い・悪いという話ではありません。「しっかり隠す」のと「境目をなじませる」のは、向いている方向が違うだけ。自分がどちらの居心地を選ぶか、という好みの分かれ道だと思ってください。

今の白髪の量に、ちょうどいい一本を

白髪は、ある朝とつぜん現れるのではなく、1本ずつ、少しずつ増えていく地続きのものです。黒い髪の中での白髪の量も、ちらほら・目立つ・多い、と少しずつ移り変わっていきます。だとすると、選ぶカラー剤も一度きりの正解ではなく、白髪の量が変わるのに合わせて、自然に変わっていくものなのだと思います。

白髪の量(ちらほら・目立つ・多い)ごとに、向いている染め方を整理した図

ちらほらのうちは、戻せる軽い手段でゆるく寄り添うか、明るさの差を縮めておく。目立ってきたら、白髪をしっかり覆える白髪染めへ。多くなったら、明るさで差をなじませるという道も開けてくる。そのどれもが、今の白髪の量に合っているかどうかで決まります。

白髪の量は、これからも年々ゆっくり変わっていきます。だからこそ、今ぜんぶを決めなくて大丈夫。棚の前で迷ったら、本数を数えるより、鏡の中で白髪が黒い髪からどれくらい浮いて見えているかを、ひと呼吸ながめてみてください。今の白髪の量にちょうどいい一本を選べれば、仕上がりはちゃんと落ち着きます。白髪とは、これから先も、自分のペースで付き合っていけます。

今の白髪の量に合わせて、選ぶための手がかり
  • 白髪がちらほらのうちは、白髪染めを急がなくてもいい。気になる所だけ塗れて色が落ちても元に戻る「戻せる軽い手段」(カラートリートメントやヘアマニキュアなど)でなじませるか、白髪染めの明るめのもので黒髪との差を縮めておく。
  • おしゃれ染めで明るくしても白髪は薄っすらしか染まらない。白いところを隠したいなら、白髪染めを選ぶ。
  • 白髪が目立ってきたら白髪染めへ。剤型(クリーム・泡など)は「どこを染めたいか」で選ぶ。
  • 毎回の全体染めは毛先が傷むので、伸びた根元だけを染める「リタッチ」も選択肢に入れる。
  • 白髪が多くて境目が気になるなら、暗く隠す一択ではなく、明るめにして差をなじませる道もある。ただし明るいほど白髪のカバー力は控えめになる点も頭の片隅に。

→ クリーム・泡・ワンプッシュなど剤型ごとの向き不向きをもっと知りたい方は「剤型別の選び方の記事」を、白髪をどこまで明るくできるのかが気になる方は「白髪と明るさの記事」も、あわせてどうぞ。

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